コ ミ テ ィ ア 9 4 戦 利 品 レ ビ ュ ー !











































コミティア、お疲れ様です!実に刺激的なイベントでした。
ここでは創作オンリー作品展示即売イベント、COMITIA94で手に入れた
素晴らしい本の数々をご紹介していきたいと思います。


まずは、集合写真!




超かっこいい!どれも実にかんろくがあります。
作品集の表紙かくあるべしといわんばかりですね。
どの本から紹介しようか迷ってしまいますが、
まずはこれからいきましょう。



Degas/Lautrec(ドガ/ロートレック)

二人のサブカル系作家の合同誌です。
ギルティギア/シャープリロードみたいなタイトルですね。
そんなにページ数が多くもなく、手に取りやすい画集でした。


スペースで売り子をしていたドガさんは真面目そうな印象でした。
スペースで展示していたポップは合同誌の表紙にもなっている美少女イラストでした。

ページ数の少ない画集の割に、ラフっぽい素描を結構大図版でがんがん収録していて、
思い切った構成になっていました。ともすればスカスカで見応えのない本になってしまいがちな
選択ですが、十分に満足できる本になっているのは、ドガさんもロートレックさんもドローイング
がエネルギッシュで自信満々なのと、全体的に絵のモチーフ選びが似ている(ロートレックさん
が合わせているらしい)ことから、まとまりが感じられるためでしょうか。
とにかく欲張らず、収録数を減らして一点一点を大事に見せようというスタンスが成功している
好例といえると思います。

次に行きましょう。


THE HIGHWAYMAN(ザ ハイウェイマン)

絵本の挿絵のような絵が魅力的な、キーピングさんの本です。
表紙が震えるほど美しい!
印刷所はオックスフォード大学らしいです。ぼくも今度利用してみようかな!
全編水墨で描かれています。この場合はインディアンインクと言ったほうがいいでしょうか。
流行りのファッションオリエンタリズムかと思いきや、この絵本はもっとプログレッシブです。
一貫したセピアの世界観を、白馬に乗った仮面の追いはぎが駆け抜けていきました。



やばい!
前半部分で使った挿絵を、絵本の後半部分の挿絵にそのまま色反転して連発してきます。
朝を舞台に始まる物語が、夜に向かって進行していく様子を、あまりにも熾烈に表しています。
二色刷りが表現できる情感の可能性と、視覚効果の限界の拡張を見せ付けられる表現です。
これがあるからイベントでの買い物はやめられない!



ビアズリーのイラストレーション

つづいて、こちらもセピアカラー画集です。

セピアカラーといっても、正確には黄色みのある書籍紙に刷った白黒刷りが、
経年劣化によって更に黄ばみの発色が強くなってセピアになっているという本です。



これほど黒い遊び紙が映えている本は見たことがありません!
黒とセピアのコントラストという、最もプリミティブな印刷の美意識における、
一つの極致に達しているといえるでしょう。紙の劣化を込みで描かれるイラストレーションと、
紙の劣化を込みで編集する編集者が揃ってはじめて完成する画面がひたすら連続します。
「ビアズリーのイラストレーション」というあまりにも簡素でそっけないタイトルは、
この本の読後でさえあればむしろストイックで魅力的な表題にすら感じられるでしょう。

次はご存知の方もきっと多い、有名な壁サークルの本です。



ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

思わず表紙を鏡に映してしまいました。迫力2倍です。
壁サークルというのは壁画ばかり描いている作家のサークルのことです。
この画集にも壁画サイズの絵が大量に収録されており、非常にボリュームがあります。
このサークルさんは自家製本の分厚い小説を大量に制作していることで有名ですが、
今回は普通に画集を買いました。


上の写真はダーガーのサークルスペース。全部ハードカバーだ!
自家製本なのでやりたいほうだいですね。
憧れるスペースのあり方のひとつです。



画集の内容は8割がロリータなポルノでした。
しかも今流行りの女装男子、いわゆる男の娘です。
男子児童の性器なら印刷所のチェックをすり抜けられるわけですね。
流行の先端をつかみながら同時に法律をかいくぐり、
しかもそれをシニカルに描ききる!まさにサブカルチャー!

銃火器、美少女、残酷描写、児童ポルノ、キッチェなモンスター、
とにかくいかにもコミティアで人気のありそうなモチーフが多く、
人気があるのも納得できます。しかもこのサークル、
トレス疑惑まであり、ほぼ確実にクロだといわれています。
なんて言いながらもこうして画集を買ってしまっているのですから、
ぼくもほどほどに俗っぽいですね。
市場に一致して売れているとか、どんな画法で描いているかということは、
面白いかどうかということにくらべればちっぽけな問題だと思います。

パタン。


ArT RANDOM CLASSICS(アートランダムクラシックス)・
Adolf Wolfli(アドルフ ヴェルフェリ)

壁サークルの次は地図サークルです。
フリーハンドで、独自のルールに基いて細密画的に描かれた地図が、
延々と収録されている画集です。素朴にズレたコンセプトで素敵ですね。
沈黙と閉塞の描線で塗りたくられた重々しい表紙をめくると…




ギャー!!
吐き気がするほど美しい、トマトジュース色の前後遊び紙です。
「キチガイの世界へようこそ!歓迎するよ、まずはこいつを喰らいな!」
食前酒がトマトジュースなら、メインディッシュには何が出てくるのか?期待が膨らみます。

しかしはたして本文の内容は、実はあまりいい感じではありませんでした。
とにかくほぼ全ページが地図の絵を見開きで掲載しているのですが、
どうも地図というのは図版が大き過ぎると地図にしか見えず、どんなに美しくとも、その機能が
イラストレーションという観点からの鑑賞を妨げてしまいます。
また、見開きになることでページの隙間にたくさんの重要なモチーフが埋もれてしまっていて、
ぜひとも見えなければいけない部分が丸ごと見えない、という事件がページをめくるたびに起き
ています。アドルフ・ヴェルフェリ氏の画集は、見開きでなく、またもっと適度なサイズで鑑賞し
たいですね。



ファブリ世界名画全集53 Klee(クレー)

抽象画系の中堅サークルで買った本です。全集53という数字からも、
同人活動歴の長さがうかがえます。
油絵の画集ですが、ひたすら構図主義的なので、むしろデザインの資料になります。
なんと105円で売っていました!わーい!在庫処分ということなのだそうです。
さすが中堅古参サークルはやることがちがうなといったところでしょうか。
得過ぎた利益をお客さんに還元だなんて、いつかぼくもやってみたいものです。




ボッシュ(BOSCH)

個人的に大好きで動向を追っていた、シュールでキッチェなダークファンタジー系の絵師さんの
待望の画集です。
ファンタジー系画集というとありがちそうですが、
この画集の特筆すべきところは、格好を付けたり、可愛くしたり、あるいは控えめにしたりとい
った部分が微塵もないところです。
その筆跡が残す怪人のひとつひとつは、ひたむきに皮肉っぽく、どこまでも醜悪です。



とても理知的に描かれた、しかし同時にブレーキのかかっていないキャラクターデザインと配置
がもたらす二面性は、品のある静寂と芳醇な哲学の香りを放っています。
なるほど、こんな造形は思いつかなかった、というモチーフたちが、画面を多い尽くしていると
いうページがどこまでも静かに展開されていく、というとやや主観的な賛辞に過ぎるでしょうか。
非常に学ぶべきものの多い本です。




OUT SIDER ART(アウトサイダー・アート)

大本命の企画合同画集です!
おそらくコミティア94開催時点現在、世界最強の合同誌でしょう。
今回のコミティアにはこれが目当てで来たといっても過言ではありません。
コンセプトは「専門的な美術教育を受けていない人々が、伝統や流行に影響されず、自身の内
側から湧きあがる衝動のままに表現した作品群による画集」。
これです!まさにコミティア!最高だ!
世界各国から30人にも及ぶ作家陣が参加しており、重度の精神障害者、交霊術者、囚人、世
捨て人など、ハイアートの画壇では決してお目に掛かれない面々が大集合しています。
先ほど紹介したヘンリー・ダーガーやアドルフ・ヴェルフリなど大手サークルさんも多数参戦し
ており、サブカル、コミティア界隈の愛好者はもちろん、そうでない人にとっても入門書的に楽し
める一冊になっているといえます。(書店委託も開始しているようです)




NEW TETAMENT (新約聖書)


最後に、日本国際ギデオン教会さんというサークルから、
無料配布でもらった本をご紹介します。
無料本なのにけっこう分厚くて、表紙と背表紙に箔押しまでしています。





内容は小説・文芸本のようです。

しかし、無料で受け取った本について批判的な意見を述べるのも気が引けますが、
この小豆色のフェイクレザーの表紙と、題字の配置、箔押し。
いずれも必然性のある選択とは思えず、とにかく安易に高級感を演出しようとしている感があ
って、あまり美しく感じられません。

金の箔押しをするなら表紙の色をもっと暗くするとか、サークル名とサークルロゴ、それから漢
字の「新約聖書」のフォントをもう少し小さくするとか、あるいは背表紙ももっとエレガントなフォ
ントにするか、フォントを小さくして引き締めるかすべきだと思います。

本文の組もかなり読みづらくて、索引が異常に充実している割に、何故か索引から目的の章を
参照しにくいという風になっています。
極端に本文フォントが小さいのは、恐らくページ数の節約かと思われますが、それなのに何故
か対訳で収録されており、どういう層の人にどういう風に読んでもらいたいのか、読み手のこと
をイメージして作られていないように感じます。

しおりひもが付いていたのは古風で好感が持てましたが、
肝心の本文は、1から10までを順当に読み進めていく仕立ての物語にはなっておらず、
主に索引を活用しながらアクロバティックに読んでいくようになっているため、
しおりひもが活躍できるタイミングがあまりありません。

全体的に、無料本の割にお金がかかっているように見える反面、
予算がぞんざいにあてがわれているように思われ、残念な印象です。



オマケ


プロとしても第一線で活動なさっているピカソさんのクロッキー集です。
ファンならこういう好きな作家さんの素描集というのは垂涎ものですね!
こうした商業出版ラインではお目にかかりにくい性質の作品に多数出会えるのも
展示即売会の魅力の一つだと考えます



まだまだご紹介したいサークル、本は枚挙にいとまがありませんが、
今回のコミティア94レビューはこれにて締めくくらせていただきたいと思います。
このレポートを読んだ方が、未知の世界、未知の美意識と、そこで魂の灯火を燃やし活躍する
作家さん達に興味を持つきっかけになりましたら幸いです。


2010 11 17 COMITIA(コミティア)94レポート・新刊レビュー エイチシー記


モドルグリ